INTERVIEW

INTERVIEW with NOZOMI HARA 次世代型プロリーグが生み出す新しいファンと選手の関係性に期待

ファンと選手が幸せになれるリーグかどうか――。それはハンドボールの新リーグが成功するための大切な条件だ。原希美は仕事と競技を両立し、大きな怪我も乗り越えて、地域密着型クラブチームの「三重バイオレットアイリス」で長くプレーしてきた。おりひめJAPANの主将も務めたトッププレイヤーは、ハンドボール界の未来に対してどのような期待を持っているのか?次世代型プロリーグが生み出す新しいファンと選手の関係性に、彼女は思いを馳せている。

――原選手は三重バイオレットアイリスでプレーしています。

地域密着でずっと活動しているクラブチームです。地域との接点、つながりはリーグの中でも強い方だと思います。選手は三重県鈴鹿市にある企業で一人ひとり働いていて、会社とのつながりもあります。スポンサーさんと共同で、色んなイベントもしています。

――原選手は「ホンダロジスティクス」にお勤めですが、仕事と練習はどのようなサイクルですか?

仕事はフルタイムで働いて、夜に練習というのが基本です。総務に所属をしてお客さんが来られたときの対応とか、P Cでの入力作業などが主な仕事です。会社の理解をいただいて、試合日と、前日移動の場合は前日の仕事を休ませていただいています。

――街で声をかけられることはありますか?

東京オリンピックに出てから、声をかけられることが増えました。

――原選手は「プロ」に対してどういうイメージをお持ちですか?

アスリートとしてハンドボールをしていて、やっぱりそこへの憧れはあります。ハンドボールだけで生活できる状況は、目標と言うより、ハンドボーラーとしての憧れだと思います。

――他競技の“プロ”と今まで接点はありましたか?

私が怪我をして、ナショナルトレーニングセンターでリハビリをやったときに、一緒にリハビリをして仲良くなったプロサッカー選手がいました。 話をする機会もあったんですけど、金銭面も練習環境や試合環境も違いますよね。ハンドボールではなかなか考えられないようなサポートがあると聞いて、それを知ると純粋に「プロはすごい」と感じましたし、「ハンドボールもこうなれたらいいな」とも強く思いました。
あと私は1度(男子バスケットボール)Bリーグの、滋賀と三河の試合を見に行ったことがあるんです。そのときの演出に気持ちが昂ぶった経験があって、そういう演出をハンドボールでやれば、選手のモチベーションも上がるなと思いました。もちろん会場に足を運んでいただけるお客様も、試合前の演出ですごくワクワクしてもらえるはずです。

――プロサッカー選手との交流で「プロはすごい」と感じたのは、特にどういう部分ですか?

1日中、競技のことだけを考えて生活できる部分です。私だったらハンドボールについて考えながら、仕事についても考えなければいけません。
プロは体を動かす練習を半日くらいして、あとは身体のメンテナンスやリラックスなど色んな部分に時間を使えます。それはアスリートとして羨ましく思いました。

――練習以外の時間も、アスリートには大切だし必要ですね。

身体のメンテナンスは本当に大事で、怪我をして特にそこは感じます。メンテナンスの時間があればあるほど、競技人生も伸びてくるはずです。
身体のケアはもちろんなんですけど、心のケアも時間が必要です。「また頑張ろう」という気持ちになるには、自分の好きなことができる、リフレッシュする時間も大切です。

――次世代型プロリーグが発足して、「ハンドボール専業」の選手が増えるまで少し時間がかかると思います。ただ原則的にはダブルインカムの選手も「ハンドボールの評価」と「仕事の評価」が分かれるようになります。それは選手のやりがいに繋がると思うのですが、いかがですか?

そうですね。アスリートとしての価値をしっかり評価してもらえれば、選手にとってはやりがいにつながると思います。

――次世代型プロリーグ構想が発表されますけれど、どこがどう変わると想像していますか?

まだ具体的なイメージがはっきりしている訳でなくて、「どうなっていくんだろう?」という感覚もあります。今までプロを経験している日本リーガーは女子にはほとんどいなくて、プロとは何なのかが分からない選手も大勢いると思います。
ただプロになる以上、プロとしての責任を持ってやらなければいけなくなります。「プロだからもっとやらなければ」と責任感が生まれたら、競技への取り組みが変わるはずです。そこはポジティブだし、競技全体の強化にもつながると思います。
金銭的な面でも、プロとしてプレーに対価をいただける形となれば、選手の意識はぐっと変わります。「これくらいもらっているなら、試合を見て応援していただけるファンの皆様にプレーで恩返しをしなければいけない」という気持ちも生まれるはずです。

――新リーグの発足は2024年なのでまだしばらく先になりますが、どのような期待をお持ちですか?

見ている人がワクワクするような環境、雰囲気のあるリーグになることを願っています。もちろん今の日本リーグも多くのファンの皆様が応援してくださって、ワクワクした雰囲気はあると思います。新リーグになって、試合前の演出が変わるだけで選手の気持ちも変わると思いますし、ファンの皆様にも「これから何が始まるんだろう?」とワクワクしていただけるはずです。

――お客様が楽しんでいる環境ならば、選手は気持ちが乗った状態でプレーできますね。

選手はお客様に楽しんでもらうためにプレーで魅せます。ファンの皆様も選手が楽しく思い切りプレーしていることで、より楽しんでもらえると思います。そういう方々がいるから自分たちは頑張れるし、ファンの皆様も選手がいるから「応援したい」「試合を見て元気をもらえたから頑張る」となる。その関係性を大事にしながら、できたらいいなと思います。

――最後にまだハンドボールを見たことがない人に向けて、競技の魅力を伝えてもらっていいですか?

迫力があって、好守の切り替えの早いところが魅力です。身体と身体がぶつかり合う、迫力のあるスポーツなので、1回見てもらったらハマってもらえる自信があります。初めて見に来た方から「こんな激しいスポーツだとは思わなかった」と言われます。騙されたと思って、ハンドボールの試合を1回見に来てほしいなと思います。
(インタビュー・構成:大島和人/撮影:栃久保誠)


原希美(はら・のぞみ)
三重バイオレットアイリス所属。1991年3月9日生まれ、宮崎県出身。身長170cm。ポジションはレフトバック(LB)。2019年の女子世界選手権直前に右膝の前十字靭帯断裂という大怪我に見舞われたが、リハビリを経て復活。東京オリンピックでは女子日本代表『おりひめJAPAN』の主将を務めた。